
1918年春、ドイツ帝国陸軍は西部戦線において最後の大規模な攻勢を開始する。いわゆるカイザー攻勢である。
この戦いで、ドイツ軍は野砲の一部を最前線に押し出し、予想される英仏軍の戦車による反撃に備えた。野砲を最前線に送るのは異例の事態である。
そもそも砲の歴史は前線からの後退の歴史であった。砲は射程の延伸とともに戦線から遠ざかり、19世紀の終わりに間接砲撃の技術が確立されると、砲兵隊はついに前線の兵士の視野の彼方に遠ざかった。第1次大戦末期、砲兵が最前線に送られたことはまさに歴史的「帰還」であったといっていい。
この事件は次の戦争で砲兵が演じる役割のプレリュードとなった。砲側照準で目標を直接砲撃する技術が再び重要になったのである。目標とは当然戦車などの装甲戦闘車輌である。
第1次大戦後には、装甲目標専用の砲が模索された。
敵戦車の装甲貫通だけを目的として、砲弾の初速を高め、装甲目標専用の砲弾(徹甲弾)を用意すれば、野砲よりずっと小さな砲でも目的は達せられる。このような砲は対戦車砲antitank gun,Pazerabwehrkanoneまたは速射砲quick fire gunと呼ばれ、小口径(25〜47mm)の長砲身高初速砲で半自動鎖栓を備え、低姿勢のシルエットを持つなどの特徴があった。
これらの砲は500mからおおむね50mm前後の装甲板を撃ち抜く威力があり、戦前の戦車のほとんどに対して十分な威力があった。その存在が戦車無用論者の主張の根拠になったほどである。
このような兵器の存在は当然ながら「戦車派」の軍人たちにも強く意識された。彼らは戦車に対戦車砲対策を考えざるを得なかった。
例えば、イギリスでは歩兵とともに前進する歩兵戦車には強力な装甲を与え、軽装甲の巡航戦車は対戦車砲を回避することで対策とした。ドイツは全戦車に榴弾射撃能力を与えた。彼らはこれらの対策により、対戦車砲は戦車が革命的兵器たりうることを阻止できないと信じた。
対戦車砲は戦車を阻止できるか? この命題の解答は現実の戦争の中にしかない。
後知恵をもって見れば、回答は単純極まりないものである。
対戦車砲はその火力が通用する敵戦車に対しては大きな脅威となったが、対戦車砲弾に抗堪する重装甲を備えた戦車には無力であった。そして、対戦車砲はまだ高性能化、大型化する余地があり、戦車の装甲防御力も同様に強化される余地があった。
要するに、戦車と対戦車砲はともに有用な兵器であり、戦時下の兵器の開発・改良競争にもろともに巻き込まれつつ、戦争を生き抜く運命にあったのだ。たいていの問題は中庸の立場が解決するというアリストテレスの箴言は、この場合も至当である。
第2次世界大戦の間、あらゆる戦場で戦車と対戦車砲の対決があった。機動力と装甲をもつ戦車とそれをもたない対戦車砲では戦車が圧倒的に有利に思えるが、対戦車砲にも有利な点はあった。対戦車砲はシルエットが小さく、隠蔽は容易で、たいていは戦車に発見される前に第一射を放つことができた。また、戦車がせいぜい2名の操砲員をもつにすぎないのに対し、5〜8名で操作する対戦車砲は高い発射速度で継続的に射撃ができた。
PAK35/36はドイツ陸軍採用のラインメタル社製3.7cm対戦車砲である。
1928年採用。他国の同種兵器に大きな影響を与えるともに、中国に輸出、ロシアにライセンス供与された。スペイン内乱では、ロシアが人民戦線側に供与したT-26戦車の装甲をやすやすと破砕し、日中戦争では日本戦車の脅威となった。スウェーデンのボフォース37mm砲、イギリスの2ポンド速射砲などと並んで、大戦間に開発された代表的対戦車砲のひとつである。
しかし、ラインメタル砲は対仏戦ではフランス戦車、イギリス歩兵戦車の重装甲に直面し、独ソ戦が始まるとついに実用性を失う。
戦車の装甲の強化に対し、ドイツはPAK35/36に替えてPAK38 5cm対戦車砲、PAK40 7.5cm対戦車砲と、次々に強力な砲を開発、投入する。他国も事情は同じであった。戦車と対戦車砲の死闘は戦争終結の日まで続いたのである。
| キット: | タミヤ |
| スケール: | 1/35 |
| 制作者: | 不肖、私 |
| 制作時期: | 2003年10月〜2004年3月 |
昨年(2003年)の秋口から制作していたいくつかの大砲のキットのひとつです。ZIS-3と同様、塗装の腕の向上を目的に制作したものです。
そんなわけですので、脚部末端のハンドルを0.5mmの真鍮線、右脚部の棒状の部品を1mm真鍮線で作り換えたほかには特にディールアップはしていません。インジェクションプラスチックではどうにもならない防盾の厚みは何とかしたいところですが、これもママとしました。前方から見る分にはなかなかリアルですし。
一般に大砲の模型は小さい割に複雑で部品数も多く、初心者向きとは言えません。しかし、このキットはさすがにタミヤ製でたいへん組みやすいキットです。
塗装はパンツァーグラウ単色としました。
タミヤのサフ(グレー)をスプレー、ラッカー系のマットブラックで下塗り、パンツァーグラウを吹いた後、面の部分を中心に薄く日本軍艦色を吹きました。クレオスのパンツァーグラウはかなり暗めの解釈ですので、調整と退色感を出すための処理です。
好みの色味を出すために、数色の油彩でフィルタリングし、ローアンバーでスミ入れしました。チップはエナメル系塗料でやりましたが、ものが小さいこともあり、控えめにしました。足回りは、タイヤの溝を中心にウォッシング風に溶剤に溶いたパステルを置くなどして、軽く埃汚れの感じを表現しました
予想はしていましたが、基本塗装によって、同じ効果を求めるにしてもウェザリングに使うべき色は異なってきます。その点、パンツァーグラウは難しい基本色と感じました。
|