
ソ連時代のロシア映画に「ヨーロッパの解放」という連作戦争映画があった。クルスクの戦いからベルリンの陥落までを描いた超大作国策映画で、第2次大戦当時の各国首脳を始めとして歴史的人物総出演の作品であったが、戦闘を描写するのだから前線の兵士も描かれなくてはならない。この映画は架空の兵士、ツベターエフ砲兵大尉を創出し、彼を通じて前線の戦士たち(フロントビキ)の苦難と栄光を描いている。
歴史的人物の登場人物の他に架空の兵士を登場させて、彼らの体験を描くのは超大作戦争映画ではよくある手法で、西側の映画にも例は多い。
しかし、「ヨーロッパの解放」の特異な点は、ツベターエフが砲兵であることである。彼のような役割を負ったキャラクターで砲兵というのは、西側の映画では例を知らない。砲兵は鈍重な兵器を扱う地味な兵科であるから、映画のヒーローには向かないのであろう。国策映画で採算度外視だから、却ってこういう設定が可能になったと言ってよいと思う。
実際には、第2次大戦で対戦車砲兵の果たした役割は大きかった。戦車に対抗する手段はいろいろとあるが、対戦車砲による直接照準射撃はもっとも効果的で多用された方法だった。
対戦車砲は大戦間に登場し、第2次大戦以後は対戦車自走砲、やがて対戦車ミサイルや無反動砲にとって代わられた。この兵器は第2次大戦独特の兵器であったといってよい。高価な戦車を破壊できる安価な兵器であることから、大量に生産され、戦場で消耗されていった。
ツベターエフ大尉の砲は76.2mm野砲である。フランスのシュナイダー野砲の改良型で、射程を伸ばして近代化を図ったものである。
この長射程化=高初速化は、76.2mm砲に強力な装甲貫通力を潜在させた。ロシア軍はいち早くこのことに気づき、もともと対戦車砲である45mm砲と並んでこの砲を対戦車戦闘に投入したのである。対戦車砲と言えば口径50mm以下の時代にこの砲は破格の大口径対戦車砲となり、ドイツ戦車兵の恐怖の的となった。
ZIS-3は76.2mm野砲の1942年型で、各所の簡易化により生産の増大を狙った改良が施されていた。その生産数は実に48,000門(注1)に及ぶ。この種の砲の砲側要員は通常5名前後であるから、この兵器で戦った兵士たちの数は膨大であろう。
「ヨーロッパの解放」でツベターエフ大尉が指揮していたのもZIS-3であった。クルスクの原野やドニエプルの河畔、ベルリン市街で、彼は膨大な死を目の当たりにしながら戦い続ける。神業的アクションを披露するわけでも秀でた指揮能力を発揮するわけでもない、闘志と勇気だけのヒーローだった。
「ヨーロッパの解放」のツベターエフを除いて、映像メディアは砲兵という兵士たちに正当な評価を与えてこなかった。おそらく今後も同様であろう。だが、第2次大戦の実際の戦線は、彼のように愚直かつ黙々と義務を果たした砲兵たちが支えていたのである。
(注1)以前、103,000門と書いたが、訂正する。なお、48,000門でも、その生産数は史上最大である。(2004.11.18)
| キット: | ズベズダ |
| スケール: | 1/35 |
| 制作者: | 不肖、私 |
| 制作時期: | 2003年9月〜11月 |
最近塗装に進歩を感じないなあ……。というわけで、塗装の研鑽を目的に2、3、大砲を作ってみることにしました。
キットはロシアのズベズダ製、といっても中身は提携関係にあるイタレリのキットで、イタレリの刻印もしっかりと入っています。もともと塗装の練習が目的なので、素組です。はっきり言って、工作はかなりいいかげん。
さて塗装ですが、私はウォッシングという技法に強い苦手意識があります。
ウォッシングを試みて結果が悪かった、という経験があるわけではありません。結果の善し悪しではなく、結果をコントロールできているという実感がないんですな。
そこで、今回はウォッシングは行わず、替わりにフィルタリングに近い手法をとってみることにしました。
最初、何色かの油絵の具をのせていき、次は意識して目指す色味が出るよう着色していきます。その後、スミ入れも油絵の具の黒で筆で行いました。
課題のチップも、今回はいつもよりうまく描けたと思います。練習と割り切ると、やはり大胆に筆使いできますね。
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