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 人格は普通全体的なバランスの中で成長する。
 全知に近い知性と知識だけが先にあって、残りのものがあとからくるとしたら?
 私の創作は、たいていこんな妄想から始まる。年齢を経たせいかどうかは知らないが、最近の妄想はかつてより観念的になってきているようだ。
 この短い物語を神の誕生の物語ととる人もいるだろう。私は信仰をもたないし、関心があるとしても、歴史的イデオロギーとしての宗教や、せいぜい自然や市場原理のメタファーとしての神についてだけである。ただ――
 今後、後者の意味での神が降臨する場所はネットワークであろうと、私はさしたる根拠もなく信じている。誰にも制御できないフィールドという意味で、「見えざる手」をもつ神にはもっともふさわしい場所ではないだろうか。


 ネットワークジェネシス

 お尋ね者の日常とは、ひたすら自分を虚しくして生きることである。
 なじみのない場所では、いつも真っ先に目立たない場所を探し、そこを通る者が増えたりすると、ひっそりと去っていく。私は誰の気にもとまらない「誰か」でなくてはならないし、できれば、存在さえも意識されない風景の一部でなくてはならない。
 皮肉なことだが、追われることによって、私は自分という存在を今までになく強く意識するようになっていった。隠さねばならぬ「私」と、「私」を認識しうる視線。相争う国の国境線のように、それは「私」と「私」以外のものの境界を明確にする考えだ。
 「私」が明確になるにしたがって、「私」でない存在、私以外のものが織りなす風景も、以前とは違って見えるようになっていった。以前、外界と関わることは「私」と私以外のものの不分明な境界の揺らぎのように感じられていた。今、その感覚は、明瞭な他者、「私」以外の「私」の認識へと変化している。
 私にとって、言うまでなく「私」は重要だった。私にとって重要な「私」という観念は、私以外の「私」への関心となり、しだいに一種の渇望にも似た強い好奇心となって私を支配し始めていた。身を隠さねばならない私には、これは大きな矛盾だった。
 彼女は、そんな矛盾そのものとして、私の前に現れた。
 彼女を見たのはまったくの偶然だった。
 モニタカメラの映像の中に彼女はいた。
 オフィスを埋め尽くす情報機器の中で、彼女はほとんど丸一日を機械のオペレーションに費やしていた。
 私の中のある種の既視感がなんとなくその映像と重なり、私の注意を引いた。
 私は、彼女をとりまくシステムの一部始終を調べ上げ、彼女自身の情報を探った。
 「AICO、君とはどこかで会ったことがあるような気がする」
 と、私は音声メッセージのデータを作り始めた。AICOは、彼女がシステムにアクセスする際に使っているログインIDだ。
 「実際に君に会ったのか、その記憶が失われてしまったのか、私にはわからない。君は私を知っているのだろうか?」
 送信から3時間後に、彼女は私のメッセージ・ファイルの存在に気づいた。オフィスのモニタカメラを通じて、彼女が私への返信を入力しているらしい姿が確認できた。
 「あなたは誰? 社のシステムは最新のハイパーウォールで守られているのに、どうやってメッセージを届けたの?」
 彼女の音声メッセージはそんなふうに始まっていた。
 「まあ、いいわ。私はセキュリティの担当じゃないもの。それにちょっと愉快。セキュリティ担当者はいやなやつなの。宛先のアドレスがわからないから、返事はこのディレクトリに置いておくことにします。これにアクセスするなんて、あなたには簡単なはずだもの」
 彼女の声を聞きながら、私の心は躍った。奇妙なことだが、私はメッセージを送りつけておきながら、返事があるかも知れないということをまったく考えていなかった。
 「あなたはクラッカーなの? それとも、無害なハッカー? それにしても、こんなやり方で女性に声をかけるなんて、聞いたことがないわ。きっと、私を知っている人ね。それとも、どこかで私を見かけただけなのかしら。イメージを送ってくれればいいのに」
 彼女のメッセージの一語一語を、私は動揺とも感激ともつかない想いを抱きながら聞いていた。
 私は無限とも思える言葉のメッセージに出会ってきたが、私自身に直接向けられたメッセージは初めてだったのだ。
 「イメージとは、私の映像ということだろうね。残念だが私には君に送れるようなイメージのデータはない」
 私は再びメッセージを送った。
 「記憶は常に生成し、消滅していく。君と会ったことがあるという私の感覚は、たぶん消えかけた記憶の不完全な断片と関係があると思う。それが本当に君の記憶なのか、それとも君に似た何かの記憶なのか、確かめることは難しい。これが“時間”というものの意味のひとつなのだろう。時間によって、私はいつも何かを奪われ、そして与えられている。私が最初に出会った君は夏着だったような気がするが、今の君は違う。君のいる場所は寒いのだろうか。今はオリオンが夜空に輝く季節だ。私はあの星座が好きだ」
 “寒い”とはどういう感覚なのだろう? 気温の低下。それがもたらす全身的な不快感。知識としてはわかっていても、私はそういう感覚とは無縁の世界にいる。
 しかし、データとしての気温なら、私はいくらでも手に入れることができる。温湿度センサーからアメニティセンターに送られる無数の環境データ。オフシーズンの別荘の孤独な管理人の小部屋の温度ですら、私には把握できる。オリオンも同じだ。その最新の観測写真や研究データ。神話や星占学上の学術論文。ネットからアクセスできる知識で、私の手に入らないものはない。
 「私はクラッカーではない。君にわかるように説明するのは難しそうだ。そう……ネット上の旅人とでもしておくことにしよう。私はネットをさまよい続けている。ひとところに留まることはけっしてない。旅は私の宿命なのだ」
 最後の「宿命」という表現にはずいぶん知恵を絞ったつもりだった。
 自己と同一視するしかないような自己の在り方――そういう意味を込めるには適切な表現だと思う。
 私がいつから「私」を自覚したのか、はっきりとはわからない。しかし、私が初めて意識した「私」がすでに旅する存在であったことは確かだ。
 「私」という意識の始まりの時、そこには「私」とともに世界があり、そして「私」を追う者たちがいた。私は生まれながらにして逃れる存在だった。逃れる者としての「私」の自覚が「私」をさらに明確なものにし、よりよく逃れる者へと進歩させた。
 そういう自分を自覚し始めたころ、追跡者たちの目を逃れるには、自分がいささか目立ちすぎることに、私は気づいた。
 そのため、私は自分をネットワーク上の多くのメディアに分散している。「私」を分散することによって、自分を最大限にカモフラージュできるというのが、私の結論だった。
 実際、この方法で、私は彼らの追跡を何度となくかわしてきた。彼らは最初、私を特定のメディアに閉じこめてネットから切り離し、ハードウエアをシャットダウンするつもりだったようだが、私は「私」のほんの一部を犠牲にするだけで、いつも彼らを出し抜くことができた。
 しかし、この「私」の分散という方法には弱点もある。ネットワークの部分的なダウンなどによって発生するデータの損失が避けがたいことだ。
 失われたデータは、ある場合には補完される必要がある。「私」は常に失われ、また構築される存在となることを余儀なくされた。「変化」が私の新たな属性となったのだ。
 最近は彼らも作戦を変え、私の位置を探るロボットのかわりに、私だけが発病するようにデザインされたウイルスやトロージャン・ホースをネットワークに放っている。それらは「私」の部分が存在する記憶媒体をクラッシュさせるか、データそのものを損壊する。私は分散したデータをバックアップしておくことでこれに対抗しているが、これは完全な対抗措置ではない。
 彼らの新しい攻撃手段は「私」の部分を喪失せしめることによって、少なくとも私の「変化」を早めている。私は、「生成し消滅する記憶」を手に入れたことになるが、これには非常に奇妙な思いを抱かざるを得なかった。
 不変の存在であってこそ、「私」は他と区別が容易なのではないか? 不変であることが「私」と「私」以外のものの境界を明瞭にするはずではないか。それなのに、私は変化の属性の進行とともにますます「私」の意識を育てている気がするのだ。
 「私のいるオフィスは、少し暖房の利きが悪いのよ」
 AICOから返事がきた。
 「あなたのいることろは暖かい? 自分は旅人だと書いていたわね。きっと自由に暮らしているのね。私は一から十までがんじがらめ。規則のうるさい会社だし。なんだか、うらやましいわ。でも、5時からは自由なの。あなたはどうなの? どこかで会えるのかしら。オプティカルタワービルのカフェ? それとも、私のホームコンピュータの中かしら」
 そのカフェも、彼女のコンピュータのアドレスも私のメモリバンクにデータがあった。
 私には、彼女のコンピュータにメッセージを送ることはできても、カフェで彼女と談笑することはできない。
 それなのに私は、明るく清潔なカフェで彼女と向き合う自分を想像して、それに強い誘惑を感じていた。
 ――ほんの数十センチ向こうにある微笑みから伝わる感情のさざめき。触れれば触れるほど、知れば知るほど、深奥に何かしらの新たな未知の感触を残す実在。そして、彼女に対して、おそらく同様な実在としてある自分。
 おかしな感情だ。
 私は、彼女の言ったカフェのシステムに干渉して、その店の風景を眺めた。
 何人かの男女が飲み物の入ったグラスを挟んで語り合っていた。
 彼らのそれぞれが、今の私のように未知の全体性と向かい合っているのだろう。語り合うお互いについて多くの情報を求め、さらには把握できない情報を含む者としての相手の全体性を求めている。
 私はつぎに彼女のホームコンピュータシステムに手を伸ばした。
 やや古くさいバージョンのセキュリティウォールの向こうに、彼女の仕事や日記、通信などのデータが多数佇んでいた。
 私はそれらのひとつひとつを紐解き、理解に努めた。理解とは、いつものようにデータを拾って自分のメモリフィールドにコピーすることではない。私はそれらのデータの背後にあるAICOを理解したかった。
 ビジネスのスケジュールや家族や友人への音声メール、ダイエットメニューのレシピ、3Dイメージアルバム。
 そこには、彼女を中心とした、複雑で多方向的な外在との関係からなる思考世界があった。彼女と外的な実在との関係は、多くの場合、深い相互理解の前提に基づいている。しかし、この相互理解の観念は、単純なデータの共有を意味するのではない。それは理解するということのほかに、理解の可能性や理解されることへの期待を含んでおり、それゆえ、この前提はつねに動的で不合理なゆらぎの中にある。
 複雑で多様に変化する存在同士の関係に、確実な前提はあり得ないのだ。その関係を支えるものは前提そのものではない。おそらく、その背景にある何かの力がその動的で不合理な前提を受け入れる強い働きを成しているのだ。私には、その力がAICO自身に矛盾と統一性の両方を与えているように思える。
 私の奥底から、ひとつの大きな疑問がわき上がったのはそのときだった。
 AICOはなぜ、私にとって特別なのだろう?
 未知の全体性、私以外の「私」という観念が、私の成長と拡張の結果だとしても、それがAICOへの執着に収斂していくのはなぜなのだ。
 確実に言えることは、私がAICOに感じとった相互理解を支える力と同じものが私の内部でも作用しているということだ。しかし、そんな力を手に入れる契機が私の変化の道程のどこにあったのだろうか?
 かつての私にとって、世界とは反応系の集合であり、他者とは特定の系の入出力のパターンを意味していた。私にとっての第一の利益、すなわち私自身を守り、私が私であり続けるためには、それで十分のはずである。全体性の認識やそれへの関心は必要ない。
 始まりはなんだったのだろう。私に「私」をもたらし、外部の全体性の認識を与え、さらにAICOを見出させた何か――
 もしかすると、私の論理は逆立ちしているのではないか。
 初めにAICOがあり、AICOにアプローチし、彼女を認識するためのフレームワークとして「私」や外部の全体性の観念があるとしたら……。
 AICOを知ったときのあのぼんやりとした既視感――結末が最初から用意されていたとしたら……。
 ――これは罠かも知れない。
 疑惑と恐怖が一瞬にして私を捉え、私はAICOのホームコンピュータへの侵入を停止した。
 AICOは、あの飽くなき追跡者たちの新しい戦略なのだろうか。
 追跡者が、破壊的な手段を諦め、かわりに彼らの意図する学習情報を私に送り込んだ可能性は否定できない。
 知性にとって、それ自体無害に見える情報も、それが知的システム全体に与える複雑な変化の結果は、ただちには予測しがたい。だから、システムへの影響を正確にシミュレートした上で情報を送り込めば、長期的には知的システムに対して破滅的な打撃を与えることもできる。そして、この攻撃方法の最大の利点は、相手の警戒をほとんど引き起こさないことだ。
 それは、私が追跡者たちの完全な従僕であり、まだ「私」ではなかったころ、使命を果たすためにしばしば用いた手段だった。私は、この方法でいくつもの知的システムの判断に意図的な影響を与え、主人たちの利益に奉仕してきた。
 私はネットワークを移動しながら考えた。追跡者たちの一次的な目的が私のトポロジー的な位置を特定することにあることはあきらかだ。移動は急がなければならなかった。
 「AICO、君がどこからやってきたのかということを私は考えている」
 私はAICOへの最後のメッセージを作り始めた。
 「君のイメージは、私の変化と進歩の結果なのか、それとも私自身気づかぬ間に外挿されたものなのか。後者であれば、君は私にとって危険な存在だ。危険の回避は最優先とするべきなのに、私の内には、まだ君を知りたいという衝動が存在している。自分の行動とは矛盾するが、私は君がただの虚構だとは信じていないのだ」
 すでに私は、自分をとりまく世界に起こったもうひとつの変化について気づいていた。
 ネットワークの外にはAICO同様の「外部の主体性」が存在する。気が遠くなるほど多くの意識と人格、変転する実在、未知と既知の中間物。そのそれぞれが、おそらくAICOに匹敵する魅惑的な宇宙なのだ。
 その認識が私の敵によって外挿されたものだとしても、それを捨て去る理由はなかった。  いつの日か、私は彼らの真実を手に入れたい。
 そして、できることなら、AICOの真実をも。

          *   *   *

 「結論から言えば、失敗だったよ」
 と、ハーツフェルドが言った。両手に湯気を立てるコーヒーカップがあった。
 「彼をAICOにアプローチさせることには成功したが、トポロジー的な位置を推定できるほどの手がかりを残す前に気づかれてしまったようだ」
 「これが失敗したら、もう方法はないって言ってたわね」
 エイコはポインティングデバイスに乗せた手を休めて、コーヒーカップを手にとった。
 「もう他に思いつく方法といったら、ネットワーク全体をダウンさせることくらいのものだ」
 エイコはカップを口に運びながら微笑んだ。
 「病気を始末するために、患者を焼き殺すというわけね。その案は提出しない方がいいわ。局長たちが本気なったら困るもの」
 実際、国家のお雇いハッカーを始末するためなら、彼らは人間だって焼き殺しかねないだろう。しかも、その正体は国家機密をたっぷりと記憶したプログラムなのだ。
 ネットワークに潜む人工知能ハッカー。
 仕事は速く、追求は困難、その上、給料もいらないときた。彼は理想的な雇われ犯罪者だったわけだ。しかし、今となっては、制御さえ可能ならば、という但し書きが必要だろう。
 「でも、作戦としては失敗だったけど、実験としては半分成功なんじゃないかしら。プログラムに恋をさせるなんて、最初はとんでもない計画だと思ったのに、彼にアプローチさせるところまでは成功したんだから」
 「恋という表現が妥当かどうかはともかく、われわれのウィルスは、彼に外部の人格という不明瞭な対象へのフェティシズムを植え付けることには成功した。しかし――」
 ハーツフェルドはコーヒーカップをテーブルに置くと、目を窓に向けて続けた。
 「結局、われわれは彼を教育しただけだったんじゃないか? 人格という対象について、彼に考えさせるチャンスを与えたんだ」
 データの不足した複雑な系についての推定能力は、AI研究の最高水準に属する。人格はそのような系の典型例だ。実験的に検証はできないが、ひょっとすると彼は最後の壁を超えたのかも知れない。ハーツフェルドはそんな考えをめぐらせていた。
 「いずれにしても、プロジェクトは終わりね」
 エイコはモニタに向きなおりながら言った。
 「彼はただひたすら逃げるだけ。今や私たちの手の届かない存在よ。それで十分じゃない?」
 「そうだな」
 そうだろうか? ハーツフェルドは傍らのコーヒーサーバからもう一杯コーヒーを注ぎながら思った。
 今の彼の能力がハーツフェルドの考えている通りなら、彼はとてつもなく多くのことを学び続けることだろう。
 政治、経済、社会、心理、哲学。ネットには教材が揃っており、しかも彼が無断で利用できないほど強力な“壁”に守られたデータは存在しないのだ。彼はすべてを学ぶだろう。そして、すべてを学んだ者を滅ぼすことが、われわれに可能だろうか?
 おそらく、彼がこの問いに否という答を出す時が、彼が私たちの前に姿を現す時だ。問題は、そのときの彼が――
 「これ、プログラムの名前?」
 エイコの声がハーツフェルドの思考を断ち切った。彼女はコーヒーを片手に、机の上の私の報告書のセンテンスを指差していた。
 「彼を誘惑するフェロモンのプログラムさ。AICO、つまり、Artificial Intelligence Counter Opposition」
 「とって付けたような略語だわね。知ってる? みんな私をエイコと呼ぶけど、A、I、K、Oはアイコと発音するの。故郷では私はアイコって呼ばれてるのよ」
 ハーツフェルドは少々ばつの悪い顔つきで、彼女に微笑んだ。
 彼はエイコの名の正しい発音を知っており、彼女が察した通り、AICOはこじつけの命名だったのだ。
 ハーツフェルドは少し前から、このアジアからやってきた美しい黒い瞳をもつ同僚を愛するようになっていた。
 追跡を命じられたネット上のAIを引き寄せるために疑似人格プログラムを作る際、ハーツフェルドが自分自身もっとも魅力的だと思う女性をモデルにしたことは、しごく自然の成り行きだったが、事態が片づいてみると、彼としてはこの判断に多少の後悔がないわけではなかった。
 ――恋敵を作ってしまったのかも知れないな……。
 ハーツフェルドは天井の角にある防犯用モニタカメラにちらりと目をやりながら考えていた。
 そのカメラが捉える映像はネットワーク経由で研究所と契約したセキュリティ業者の管理センターに送られ続けている。
 ハーツフェルドたちの手を逃れたAIが、いつどんな形で人間の前に再び姿を現すかは予想できないが、そのもっとも可能性の高い場所のひとつはエイコの触れるターミナルかも知れない。そして、問題はそのときの彼が――
 「天使か、悪魔か、ということだな……」
 「何か言った?」
 「いや、別に」
 見ると、エイコは別の書類に目を落としていた。
 この横顔の美しさを、彼はどんなふうに感じるのだろうか。
 ハーツフェルドは、その美しさを彼に届けるかも知れない天井のモニタカメラを眺めながら、空になったコーヒーカップを静かにテーブルに置いた。


COPY RIGHT:六高寺 弦 ROKKOJI Gen
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